2008.05.11(Sun)
心が壊れそう。
このまま壊れて何も感じなくなれば、苦しみも無いのかな。
苦しみも悲しみも、全部。
「もぅ…やめて………。」
そう声を掛けたのは、この人に対してではなくあの子達に対して。
声が枯れるまで叫んでもう掠れて出ないのに、それでも鍔の飲み込み口を開く。
こんなに荒れた動きを見せたのは、初めて。
制止の声を聞くことはなく、何度でも葉や枝、蔓を伸ばす植物達。
少しでも隙があれば私の手や足に絡みつき、痛いほど強く引っ張る。
それも全て赤毛の人や周囲を囲んでいる人達によって断ち伐られ、力尽きていく。
お願いだからやめて。
そうじゃなくても火災で弱っているのに、それでも助けようなんてしないで。
心の中で何度お願いしても、勢いは止まらなかった。
道なき道をさらに塞ぎ、燃えている木が留めようと狙いを定めて倒れてくる。
それでもこの赤毛の人は私を解放しない。
眉を寄せ汗を零しても、腕の力を緩めようとはしないのだ。
何故そこまで。
無償の愛を与えてくれる植物達。
あの子達に愛される私を狙う人達。
どこに価値を見出しているのか、理解出来ないよ。
「さすが御子だね。そう易々と連れ去られてはくれない…か。やはり彼を選ぶのかな?僕達がどんな苦境にいようと、救いの手を差し伸べるのは彼の国なんだ?残酷だよ、御子。」
「ぁぐっ。」
この世界の人間にとって、私の体は小さい。
当然首を簡単に片手で掴めてしまう。
僅かな力を込められてしまうと、息が止まる。
「森の無い国がどれだけ苦しいか、御子は知ってるかな?それとも彼は説明してくれない?だって自分達を選んでもらうためには、都合の悪い事を隠さないといけない。それとも知っていて彼を選ぶ?この豊かな国を。」
「うぁ…。」
知らない。
わからない。
だって私はヘイカの国をきちんと見た事が無い。
あるのは道だけ。
それとこの豊かな森だけ。
他に知ろうとしなかった。
だっていきなり連れ去られて、追い詰められて、逃げてばかりいた。
この世界にとって『御子』がどういう存在なのかさえ、簡単にしか聞いていない。
何かを選ぶなんて…最初から与えられていないよ。
だって私はヘイカの物だったから。
不安で寂しくて泣きたい時、抱き締めてくれたのはヘイカだ。
力任せに押し倒された時は本気で怖かったけれど、それ以外はすごく優しかった。
でも………知ろうとしなかったのは私。
「ご…めんなさ………。」
馬上、食事時、就寝前、知ろうと思えば幾らでもその機会はあったのに、私は聞かなかった。
全て町へ戻ってからだというヘイカの優しさに甘えて、私は知ろうとしなかったのだ。
与えられるだけに身を委ねた結果が招いた、私の罪。
それでも体は受け入れられず、生きようと必死にもがく。
手袋をした手に小さな抵抗は全く通じず、無駄に爪を立てた。
「愛おしいよ、御子。こんなに無力でありながら世界を委ねられている、小さな君が。手折ってやりたいほど。」
「嫌!」
首の拘束が無くなった途端、腰を引き寄せられる。
迫る顔を避けようと思って逸らした瞬間、今度は後頭部を拘束されて動けなかった。
押し付けられる唇。
こじ開けられ、貪られる感覚に吐き気がこみ上げる。
この手はヘイカじゃない。
この唇はヘイカじゃない。
息つく暇を与えられる事なく、角度を変えて繰り返された。
聞こえるのは卑しいほどの水音だけだ。
先ほどまで激しく攻防していたのに、今は植物達が大人しい。
何故?
「ふぁ…。」
ようやく唇が開放されて呼吸を許されたけれど、体は全く動かない。
酸素不足で手足は力なく下がり、体はこの人に預けたまま。
髪をかき混ぜられて涙を舐め取られる。
離れた顔は酷く満足そうで、動けるものなら引っ叩きたかった。
「泣いている方が可愛いよ、御子。僕達は必ず君を連れ帰る。たとえどんな障害があろうとね。とりあえず1つ、解消かな。」
赤毛の人がとても愉快に笑う。
平時なら誰も思わない。
怖い、なんて。
「御子の祝福の威力は凄いね。さっきまでの勢いが嘘のようだよ。森に拒まれないという意味が、これでよくわかった。さすがは御子、手放せないよ。」
耳元で囁かれた。
残酷な言葉を。
「もう彼のもとへ戻れないね。」
[...READ MORE]
このまま壊れて何も感じなくなれば、苦しみも無いのかな。
苦しみも悲しみも、全部。
「もぅ…やめて………。」
そう声を掛けたのは、この人に対してではなくあの子達に対して。
声が枯れるまで叫んでもう掠れて出ないのに、それでも鍔の飲み込み口を開く。
こんなに荒れた動きを見せたのは、初めて。
制止の声を聞くことはなく、何度でも葉や枝、蔓を伸ばす植物達。
少しでも隙があれば私の手や足に絡みつき、痛いほど強く引っ張る。
それも全て赤毛の人や周囲を囲んでいる人達によって断ち伐られ、力尽きていく。
お願いだからやめて。
そうじゃなくても火災で弱っているのに、それでも助けようなんてしないで。
心の中で何度お願いしても、勢いは止まらなかった。
道なき道をさらに塞ぎ、燃えている木が留めようと狙いを定めて倒れてくる。
それでもこの赤毛の人は私を解放しない。
眉を寄せ汗を零しても、腕の力を緩めようとはしないのだ。
何故そこまで。
無償の愛を与えてくれる植物達。
あの子達に愛される私を狙う人達。
どこに価値を見出しているのか、理解出来ないよ。
「さすが御子だね。そう易々と連れ去られてはくれない…か。やはり彼を選ぶのかな?僕達がどんな苦境にいようと、救いの手を差し伸べるのは彼の国なんだ?残酷だよ、御子。」
「ぁぐっ。」
この世界の人間にとって、私の体は小さい。
当然首を簡単に片手で掴めてしまう。
僅かな力を込められてしまうと、息が止まる。
「森の無い国がどれだけ苦しいか、御子は知ってるかな?それとも彼は説明してくれない?だって自分達を選んでもらうためには、都合の悪い事を隠さないといけない。それとも知っていて彼を選ぶ?この豊かな国を。」
「うぁ…。」
知らない。
わからない。
だって私はヘイカの国をきちんと見た事が無い。
あるのは道だけ。
それとこの豊かな森だけ。
他に知ろうとしなかった。
だっていきなり連れ去られて、追い詰められて、逃げてばかりいた。
この世界にとって『御子』がどういう存在なのかさえ、簡単にしか聞いていない。
何かを選ぶなんて…最初から与えられていないよ。
だって私はヘイカの物だったから。
不安で寂しくて泣きたい時、抱き締めてくれたのはヘイカだ。
力任せに押し倒された時は本気で怖かったけれど、それ以外はすごく優しかった。
でも………知ろうとしなかったのは私。
「ご…めんなさ………。」
馬上、食事時、就寝前、知ろうと思えば幾らでもその機会はあったのに、私は聞かなかった。
全て町へ戻ってからだというヘイカの優しさに甘えて、私は知ろうとしなかったのだ。
与えられるだけに身を委ねた結果が招いた、私の罪。
それでも体は受け入れられず、生きようと必死にもがく。
手袋をした手に小さな抵抗は全く通じず、無駄に爪を立てた。
「愛おしいよ、御子。こんなに無力でありながら世界を委ねられている、小さな君が。手折ってやりたいほど。」
「嫌!」
首の拘束が無くなった途端、腰を引き寄せられる。
迫る顔を避けようと思って逸らした瞬間、今度は後頭部を拘束されて動けなかった。
押し付けられる唇。
こじ開けられ、貪られる感覚に吐き気がこみ上げる。
この手はヘイカじゃない。
この唇はヘイカじゃない。
息つく暇を与えられる事なく、角度を変えて繰り返された。
聞こえるのは卑しいほどの水音だけだ。
先ほどまで激しく攻防していたのに、今は植物達が大人しい。
何故?
「ふぁ…。」
ようやく唇が開放されて呼吸を許されたけれど、体は全く動かない。
酸素不足で手足は力なく下がり、体はこの人に預けたまま。
髪をかき混ぜられて涙を舐め取られる。
離れた顔は酷く満足そうで、動けるものなら引っ叩きたかった。
「泣いている方が可愛いよ、御子。僕達は必ず君を連れ帰る。たとえどんな障害があろうとね。とりあえず1つ、解消かな。」
赤毛の人がとても愉快に笑う。
平時なら誰も思わない。
怖い、なんて。
「御子の祝福の威力は凄いね。さっきまでの勢いが嘘のようだよ。森に拒まれないという意味が、これでよくわかった。さすがは御子、手放せないよ。」
耳元で囁かれた。
残酷な言葉を。
「もう彼のもとへ戻れないね。」
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